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ガラパゴス化する日本の製造業

ガラパゴス化する日本の製造業

ガラパゴス化する日本の製造業

日記がひとつだけでは寂しいので、もうひとつ書いてみました。


ガラパゴス化する日本の製造業
 産業構造を破壊するアジア企業の脅威」
宮崎智彦 東洋経済 1600円+税

◎読んだ理由
私は製造業の会社に勤めています。ですので、製造業に関する本であれば、「おっ」と思って手に取ります。この本はさらに題名が気になったので買いました。


◎本の内容
日本の製造業では、日本国内市場では売れても海外では売れない、という事態が起こっている。日本市場では高性能の商品が標準となっているが、世界的に見れば安くてそこそこの質のものが求められている、というのがその理由だ。わかりやすく有名な例では、携帯電話が挙げられる。このような状況を「日本のガラパゴス化」と形容している。
さらにアジアでは、製造だけを行い、企画や設計は海外の有名会社が行うという水平分業の新しい産業モデル(EMSやODMと呼ばれる)が構築されている。これらの企業についても考察を加える。

章ごとには、1・日本市場の特異性を知る、2・台湾系企業の水平分業、3・韓国サムスンについて、4・これからの日本企業、という感じでしょうか。


ガラパゴス化する日本の製造業、という言葉のインパクトに押されて読み始めたため、読んでいると、日本だけでなく台湾、韓国企業の考察に多くのページを割いていることに気づきます。副題のアジア企業の脅威の方にも結構重点があるんですね。
私は初め、このことに違和感を覚えました。日本の製造業について知りたかったのに、どうしてアジアの話をするのだろう、と感じたのです。しかし読み終わるころには、アジアの成長している企業について知ることで、この本はより有用なものとなっている、と考えるようになりました。
日本の製造業は売り上げを伸ばせていないわけで、失敗例とも言えます。そこで、売り上げを伸ばしている台湾、韓国企業の成功例を知る必要があります。また、本の終わりのほうで、今後の日本企業のビジネスモデルを提案していますが、そのためには前提としてアジア企業についての考察が必要です。

本の中では専門的な用語が多く使われており、読みにくく感じました。半導体や製造についての用語は繰り返し使われます。たとえば、アッセンブリ、半導体ファウンドリといった用語です。私は、とりあえず全体像を理解しようと、細かい用語にはこだわらずに読み進めていきました。

あと、もうちょっと知りたいと思ったのは、TSMC(台湾積体電路製造)について工場稼働率50%でも利益がでる、と書かれていますが、どのようにしてそのような体制とできるのかは詳しく触れられていません。そこは企業秘密なのでしょうか。台湾企業の新しい産業形態を語るための1側面として書かれたものと捉えるべきなんでしょうね。


◎私への影響
私への影響というか、この本を読んでの考え方について書きます。

  1. 日本は技術力で勝負、は本当にそうか。確かに人件費は新興国と比べ日本は高くなっています。そうなると、新興国がもっていないもの、技術力での勝負、となります。しかしこの考え方が、ガラパゴス化した日本市場に日本の電機メーカーが取り残されてしまった原因ともいえます。日本は技術力で勝負、当然ですがこの言葉は、技術力だけあればよい、ということではないのです。
  2. 外市場を意識するようになりました。日本市場はガラパゴス化しているだけでなく、成熟した市場です。日本市場だけをみて商売をしていても、今売り上げを伸ばしたとしてそのうち他の会社とのパイの奪い合いになります。グローバルの時代と言われますが、海外市場は当然に狙うべき相手なのです。

こういったことが、本の中でも伏線としてとうとうと流れています。

◎その他
この本は2008年9月に出版されたものです。経済の話なので、1年もたてば状況の変わったものがあるかかもしれません。この手の話題での新しい書籍も出ているのではないでしょうか。

また、前述したように台湾・韓国企業の記述の比重が結構あり、案外日本のガラパゴス化についての記述は多くありません。日本市場のガラパゴス化についてはすでにある程度聞いたことがあるよ、という方は、日本企業のこれからについての予測以外は、つまらないと感じやすいと思います。