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会社人間が会社をつぶす

働くことと家庭の関係についての新しい考え方です。


会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案 (朝日選書)

会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案 (朝日選書)


「会社人間が会社をつぶす
 ワーク・ライフ・バランスの提案」
パク・ジョアン・スックチャ 朝日新聞社
1100円+税


◎読んだ理由
11月の半ばころの日経新聞の中に、”ノー残業時代の過ごし方”という特集があり、その中で当書への言及がありました。私はまだ、残業を長くしている人の方が会社に忠誠心がある、という考え方があったので、どういうことなのだろう、と思い読んでみることにしました。


◎本の内容
章を追ってみていくと、1.日本の仕事と家庭の現状、2.アメリカにおけるワークライフバランスの起こり、3.ワークライフバランスの成果、4.ワークライフバランスのために自己把握をしよう、といった感じです。



日本では”仕事が優先、家庭は二の次”、”女性は家事をするもの”と考える傾向があります。こういった仕事に対する考え方は、アメリカと比べて10年遅れているといわれています。特に女性と仕事に関する考え方について日本とアメリカで大きな開きがありますが、女性に限らず、働くことと私生活との考え方全般が、日本とアメリカとでは違っているのです。


アメリカでは仕事も家庭も両立させる、というワークライフバランスの考えの元、さまざまな施策がなされています。そして、そういった仕事も家庭も両立させている人の方が、会社での生産性が高いことが明らかになってきたのです。こう考えると、ワークライフバランスを考えることは、企業にとっても労働者にとっても価値のあることであることがわかります。これまでのコスト低減活動であるQC(品質管理)活動は企業だけに利益のあるwin-loseの関係でしたが、ワークライフバランスは労働者と企業が共に利益を得るwin-winの関係にあるコスト低減活動なのです。


当書の中では、事例や調査結果が頻繁に紹介されています。これは、説得力をもたせるためのもので評価できます。当書でもっと必要だと私が思ったものは、では、日本企業はどうするべきか、ということです。たくさんのワークライフバランスの事例が示されていますが、おそらくそれを現在の日本にそのまま適用するのは無理です(日本に導入しにくいワークライフバランスの例を挙げれば、仕事を家で行う”テレワーク”、忙しいビジネスマンのためにちょっとした小間使いをやってくれる”コンシェルジェ”など)。

いつかは日本でも採用されるかもしれませんが、そのためにはゆっくり時間をかけて日本人の仕事に対する考え方を変化させていかないと、日本人にはまだまだ抵抗感のあるものです。ですので、本格的なワークライフバランス導入のための過渡期として、日本企業はどういったことから取り組んでいくべきか、という議論があれば当書の価値はもっと増す、と思いました。



ワークライフバランスの例を他に挙げておくと、保育サポート、介護サポート、転勤サポート(新しい勤務地での配偶者の職業も探して夫婦が困らないようにする)、裁量労働制などです。家族に向けてのサポート、健康サポート、働く時間・休暇の充実、おおむねこの3類型に分類できます。


◎私への影響
ワークライフバランスについて詳しく知ることができました。私生活を充実させれば仕事もうまくいく、というのは、私にとって新しい発想でした。


ワークライフバランスについての記述以上に私がこの本を読んでよかったと思ったのは、最終章での自己把握の部分です。私生活と仕事の両方を充実させるために自分の本当にほしいもの・したいものを知る、という理由から、この本の中に自己把握のための記述が入っています。

私はこの手の自己把握であったり明確な目標をもつ、といった本はこれまでに他でも読んでいたので、あまり期待していませんでした。しかし、当書の中で自己把握は1つの章を割いているだけですが、本一冊に劣らない中身だと感じました。”恐れとは、やらないための言い訳である”、”障害とは、解決策がないという自分の思い込みである”、といった言葉はなるほどと思わされました。自分自身の将来をより良くするために、いろいろなことに挑戦していきたいと思います。


◎その他
今回のカテゴリーは”仕事術”にしました。経営者がコスト低減の手段としてワークライフバランスを考えるのならば”経営”、働くことを通して自己実現を考えるのであれば”自己啓発”が適切だったのですが、”仕事術”とした方がワークライフバランスに興味がある人にはしっくりくるだろうと考えこうしました。


当書は例によって古い本で、初版は2002年、今から7年前です。日本企業は7年前と比べワークライフバランスの面においては少しも進歩していないようです。フレックスタイム、といった言葉は以前に比べ耳にするようになりましたが、ワークライフバランスという視点がそこにどれだけあるでしょうか。