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戦後世界経済史

経済の読み物です。





戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)



戦後世界経済史
猪木武徳 中公新書
940円+税




◎読んだ理由
昨年末、12月27日付けの日経新聞に2009年の『エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10』が発表されていました。その1位を飾ったのが当書です。どのような本か、読んでみようと思い立ちました。





◎本の内容




○歴史が流れていくのが見える!
当書では、戦後の経済史を特に重要なものだけ取り出して無駄なく解説していきます。それを読むにつれて、歴史がしっかりとした流れの中で動いているということが感じられます。EUの例を出せば、二度の大戦を起こす元凶となったドイツに対する警戒と、しかしドイツの経済がなければヨーロッパが復興しないというジレンマがわかります。また、なぜイギリスがEUへの加盟が遅れたのか、どうしてEUROの通貨統合に参加しないのか、が、イギリスのプライドだけでなくちゃんと理由が語られます。読んでいて、世界経済の現状が過去との関連でわかってきます。これは、大変おもしろい知的作業といえます。





○新書とはいえ読み応えのある内容
戦後の世界史を重要なものだけ取り出して解説してある、と書きました。


地域的にいうと、世界経済をリードしてきたヨーロッパ、アメリカは重点的に語られています。ソ連は冷戦期の話で登場しますが、時代が下ればなぜ社会主義国家が失敗したかが説明されます。南米、アフリカは全体的な共通項について、その中でも重要な国については少し詳しく解説が加わります。アジアは停滞期と、その後の躍動期、特に中国、韓国、ASEANは詳しく解説されます。


世界各地域をまんべんなく、しかしひとつの地域ばかりに固執はせずに、さらに時代区分にも気を使って書かれているのが伝わるでしょうか。広く浅く、と言われればそれまでですが、だからこそ万人に読みやすい内容になっています。合計で370ページ以上、新書とはいえ読み応えがあり、新書だからこそ読みやすく価格も低く抑えられています。





○難を言えば・・・
考えられる難点は二点あります。ひとつは、読むのに時間がかかること。私はこの一冊を読むのに普通の新書の倍かかりました。もうひとつは、全く経済を知らない人には理解しづらい面があることです。各国の経済をみるときに、金融政策についてなにも知らなければ流れがつかみにくいのではないか、と思います。深い知識はいりませんが、緊縮財政でデフレになる、通貨をたくさん発行すればインフレが起こるなど、最低限の知識は必要です。しかし、このふたつの難点は、逆からみれば長所でもあります。ボリュームがある少ない金融知識でも読める、と言うことができます。





◎私への影響
経済が発展するためには、安定した政治が重要なのだということが、ひしひしとわかりました。あと、財政政策がどれほど有効かはいまだわからない、というのも興味をそそられます。当書を最後まで読み終えると、これからの経済はどうあるべきか、といったことを考えさせられます。





◎その他
参考までに、日経新聞の昨年の『エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10』を5位まで書いておきます。
1.「戦後世界経済史」 中公新書
2.「いまこそ、ケインズシュンペーターに学べ」 ダイヤモンド社
3.「アニマルスピリット」 東洋経済新報社
4.「日本産業社会の神話」 日本経済新聞出版社
5.「大学の反省」 NTT出版